この記事の目次
夕食の時間になっても、親は目を閉じたまま横になっている。声をかけると目を開けるが、好きだった料理を一口食べて、もういいと首を振った。
昨日までと違う姿を前にすると、「食べさせたほうがよいのか」「今夜、急に何か起きるのではないか」と迷います。看取り期には、食事、眠り、会話、呼吸などに変化がみられることがあります。
ただし、変化の現れ方には個人差があります。たとえば、食事量が先に落ちる人もいれば、会話や活動が急に減る人もいます。呼吸が変わるまでの順番も一人ずつ異なります。
病気の種類や治療、体力によって経過は変わり、同じ変化が別の原因で起きることもあります。変化だけでは、残された時間は分かりません。
痛み、強い息苦しさ、出血、けいれん、急な意識の変化などがあれば、看取りの経過だと家族だけで判断せず、事前に渡された急変時指示に従います。連絡先が分からない緊急時は、救急要請を含めて対応します。
数週間前 食べる量と起きている時間が少しずつ変わる
それまでと同じ量を用意しても、食べ切れない日が増えることがあります。好物を口に運んでも顔を背ける、数口で止まる、食事より眠ることを選ぶ。こうした変化がみられることがあります。
眠っている時間が長くなり、家族と話す時間が短くなる人もいます。返事が一言になったり、途中で疲れて目を閉じたりすることもあります。会話が減ったことだけで、気持ちまで離れたとは決められません。
一方で、食べにくさには口内炎、便秘、吐き気、痛み、薬の影響、飲み込みの変化など、対応できる原因が隠れている場合があります。食事量が落ちた時期と一緒に、表情や症状も医師や看護師へ伝えます。
食べない姿を見たときに家族が確かめること
「食べなければ弱ってしまう」という心配から、一口でも多く勧めたくなるものです。けれど、本人が口を閉じる、むせる、飲み込めないときに食べ続けてもらうと、かえって負担になることがあります。
まず、本人が食べたいか、飲み込めるか、姿勢を保てるかを見ます。食べたい物を少量にする、においや温度を変えるといった工夫が合う人もいますが、安全な形や量はその人の状態に合わせます。
食べる量が減ったことと、本人が感じている苦しさは同じではありません。「食べていないから苦しい」「食べれば楽になる」と、外から一つに決めないことが出発点です。
口の中が乾いているときは、食事量だけを追わず、口腔ケアや保湿で和らぐ不快感がないかを医療職へ尋ねます。飲み込みが弱っている人へ水や氷を使ってよいかも、先に確認します。
食事量が落ち、眠る時間が増えた母
説明のために条件を置いた例です。在宅療養中の母が、朝食を数口で止め、昼まで眠るようになりました。痛みの訴えはありませんが、家族は食べた量、むせ、便通、薬、起きていた時間を記録しました。
その記録を訪問看護師と主治医へ伝え、食欲低下の原因と飲み込みを確認してもらいます。食事を勧める範囲や口腔ケアも相談し、本人が口を閉じたら無理に続けない方針を家族内で共有します。
これは経過を説明するために条件を置いた例であり、同じ食事量でも必要な対応は変わります。医学的な評価とケアの方針は、本人の病状を把握する医療職と確認します。
アースサポートの施設では、多くの場合、入居時に今後の医療・ケアに関する確認書を家族と交わします。最期をどこで迎えたいか、延命治療や心肺蘇生をどう考えるかなどを確認します。
医学的な状態は嘱託医が評価します。その説明をもとに、本人の意思を基本として、家族と医療・ケアチームで今後の方針を話し合います。
数日前 水分、意識、手足や皮膚にも変化が重なる
食事に続いて、飲める水分も少なくなることがあります。口に含んでも飲み込むまで時間がかかる、少量でむせる、口を開けないといった様子があれば、家族だけで飲ませ方を変えずに連絡します。
尿の量や回数が減ることもあります。家族が正確な量を測れない場合でも、最後に排尿した時刻、普段との違い、おむつ交換の様子を伝えると、医療職が状態を考える材料になります。
声をかけても目を開ける時間が短くなり、話のつじつまが合わない、今いる場所が分かりにくいといった変化が出る人もいます。薬や感染症など別の原因もあり得るため、看取り期だからと片づけません。
血液の巡りが変化するなかで、手足が冷たく感じられたり、爪や皮膚の色が普段と違って見えたりすることがあります。片側だけの急な変色や強い痛みなど、気になる変化はそのまま連絡時に伝えます。
体を温めたいときも、熱い湯たんぽや電気毛布を皮膚へ直接当てると低温やけどのおそれがあります。本人の表情を見ながら、掛け物や室温をどう調整するかを介護職や看護師へ相談します。
水分が減ったら、点滴をすればよいのか
水分を飲めなくなると、点滴を始める、増やす、続ける、減らすという選択が頭に浮かびます。どの選択が本人に合うかは、点滴の目的、病状、本人の希望、予想される利点と負担によって変わります。
点滴には水分や薬を入れる目的があります。一方、針や管を保つ負担、むくみや分泌物など体液がたまる症状との関係も検討されます。実際に何が起こり得るかは、病気と全身状態によって異なります。
日本緩和医療学会の輸液ガイドラインは終末期がん患者を対象とした資料です。口の渇きへのケアと輸液の判断を分け、状態や本人の希望に沿って検討する考え方を示しています。
がん以外の病気や老衰では、その推奨をそのまま当てはめず、病状を個別にみます。点滴や酸素を含む医療方針は、本人・家族・医療ケアチームで個別に話し合います。
話し合うときは、「点滴をするか」だけで終えず、何を和らげたいのか、どの変化を見て見直すのか、本人が以前に何を望んでいたかを確かめます。一度決めた方針も、状態や意思が変われば話し直せます。
水を勧めるたびにむせる父
説明のために条件を置いた例です。施設で過ごす父は、水を一口飲むたびにむせ、口に残すようになりました。家族は脱水を心配していますが、父はコップを近づけると顔をそむけます。
この場合は飲ませる回数を増やす前に、職員から看護師と医師へ変化を伝えます。口の乾燥に対するケア、飲み込みの状態、点滴を検討する目的と負担を聞き、本人のこれまでの希望も共有します。
この例だけから「点滴をする」「点滴をしない」という結論は出ません。本人の病状と希望をもとに、家族と医療・ケアチームが選択肢を確認する場面です。
入居時の確認だけで、将来の方針を固定するわけではありません。本人の希望や病状、家族の考えは変わることがあるため、看取り期を検討する段階で改めて確認します。
確認するのは、救急搬送、心肺蘇生、家族への連絡順、最期を過ごしたい場所などです。判断を急がせず、分からない点を医師へ尋ねられる時間を設けます。
最期の数時間 呼吸の見え方や音が変わることがある
呼吸が浅くなったり深くなったり、次の息まで間が空いたりすることがあります。規則的だった呼吸のリズムが変わると、家族には急に苦しさが増したように見えることがあります。
口が開き、息をするたびに下あごが上下し、口全体で息をするように見える呼吸は「下顎呼吸」と呼ばれます。全身状態が大きく変化したときにみられることがありますが、呼吸の形だけで家族が状態を診断するのは困難です。
初めて見たときは、急変時指示に書かれた医師、訪問看護師、施設の担当者などへ連絡します。酸素が処方されていても、家族の判断で流量や器具を変えず、指示された使い方を確認します。
のどの「ゴロゴロ」という音は何か
意識や飲み込む力が低下すると、唾液や気道の分泌物を出しにくくなり、呼吸に合わせて「ゴロゴロ」「ガラガラ」という音が聞こえることがあります。医療では死前喘鳴と呼ばれることがあります。
日本緩和医療学会「進行性疾患患者の呼吸困難の緩和に関する診療ガイドライン(2023年版)」は、音が生じる仕組みと、家族の不安も含めて評価する必要を示しています。
同ガイドラインでは、この時期に本人が苦痛と感じているかは明らかでないとされています。音が大きいから苦しさも強い、音がないから苦しくないとは限らず、音だけでは苦しさの程度は分かりません。
本人の眉間にしわが寄る、体をよじる、息苦しさを訴えるなど、ほかの様子も含めて医療職へ伝えます。吸引、体の向き、薬などの対応は、本人の状態を評価した医療職の指示に従います。
返事がなくても、普段の声で話しかける
目を開けず、呼びかけへの返事がなくなることがあります。その状態で本人が声をどこまで聞き取れているかは、外から断定できません。
聞こえている可能性を残し、返事を求めず、普段どおりの声量で名前を呼ぶ、そばにいることを伝えるという関わり方があります。本人が音や触れられることを好まなかった場合は、その希望を尊重します。
話す内容に正解はありません。今日あったことを短く伝える、手を握ってよいか声をかける、静かにそばで過ごす。家族が無理なくでき、本人の好みに合う関わりを選びます。
そばにいられなかったことを「何もしなかった」にしない
家族が交代した直後や、移動中に最期を迎えることもあります。誰がそばにいるときに呼吸が止まるかは、家族には選べず、予測も困難です。
その場に間に合わなかった事実だけで、それまでの面会、介護、話し合いまで消えるわけではありません。経過を知りたいときは、職員や医療者に、表情や呼吸、行ったケアを事実の範囲で尋ねられます。
後悔や自責が強く、眠れない、仕事や生活が続けにくい状態が続くなら、かかりつけ医や相談機関へつなぐ方法があります。介護疲れを抱え込まないための記事も相談先を考える手がかりになります。
夜間の連絡順を紙にした家族
説明のために条件を置いた例です。自宅で療養する本人と家族は、夜に呼吸が変わったら、まず訪問看護の夜間番号へ連絡するという指示を受けていました。
家族は番号、伝える内容、次につながらない場合の連絡先を一枚に書き、電話のそばへ置きました。下あごが動く呼吸に気づいた夜は、その紙を見て指示どおりに連絡しました。
これは連絡準備を説明するために条件を置いた例です。すべての人が同じ順番で連絡するわけではありません。急変時は、本人ごとに医師や施設から示された指示を優先します。
アースサポートの施設では、看取り期に訪問看護と連携することが多くあります。頻回の訪問が必要だと主治医が判断し、特別訪問看護指示書を交付した期間は、医療保険による訪問看護が行われることがあります。
看取りを選んだすべての方へ自動的に交付されるものではありません。施設種別、本人の状態、保険上の条件を主治医や訪問看護事業所へ確認します。
アースサポートの施設では、血圧の著しい低下や呼吸の変化が見られたときは、本人ごとの指示に沿って訪問看護へ連絡し、訪問看護から医師へ報告します。状況によっては、施設から訪問看護と医師の双方へ連絡します。
家族への連絡先と順番も事前に確認します。ただし、夜間や急変時の連絡経路は一律ではなく、本人ごとの指示と連携体制に従います。
変化が始まる前に、連絡先と本人の希望を一枚にする
看取りの方針が決まっていても、夜間に呼吸が変わった場面では電話番号を探すだけで時間がかかります。紙でもスマートフォンでも、家族がすぐ開ける場所へ連絡順をまとめておきます。
- 日中と夜間に最初に連絡する相手
- 電話で伝える本人の名前、病気、今の変化
- 医師や看護師から受けた急変時指示の保管場所
- 連絡がつかない場合と、救急要請が必要な場合の動き
- 遠方の家族へ知らせる人と、本人が面会を望む人
在宅での医療体制を整える段階なら、久留米市で訪問診療を考えるときの確認点で、診療時間外の連絡や訪問看護との連携も確認できます。
療養場所そのものを迷っている家族は、施設で最期まで過ごすという選択を先に読み、どこで、誰の支援を受けて過ごすかを整理できます。
介護と医療の相談先がまだ決まっていない場合は、久留米で親の介護相談はどこにするかから地域包括支援センターなどの窓口を確認できます。
方針は一度決めて終わりにしない
厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(平成30年3月改訂)は、本人の意思決定を基本とし、家族等と医療・ケアチームが繰り返し話し合う流れを示しています。
本人の意思は変わることがあります。以前は点滴を望んでいた人が、今の負担を知って考え直すことも、その逆もあり得ます。変更できることを最初から共有しておくと、話を切り出しやすくなります。
久留米市「私の生き方ノート」は、大切にしていること、信頼できる人、主治医へ聞きたいこと、受けたい医療やケアを考え、伝えるためのノートです。市は令和8年3月改訂版を公開しています。
ノートを全て埋める必要はありません。話せるうちに、苦痛があるとき何を望むか、代わりに話し合ってほしい人は誰か、どこで過ごしたいかなど、一つずつ言葉にできます。
家族から出やすい質問
食べなくなると、本人は苦しいのでしょうか
食べる量が減ったことだけで、本人の苦しさは判断できません。食欲、飲み込み、吐き気、便秘、痛み、口の乾燥などを分けて見ます。
本人が食べたがるときは、安全な姿勢や形、量を医療職へ確認します。口を閉じる、むせる、意識が低下している場合は無理に勧めず、口腔ケアを含む別の方法を相談します。
点滴や酸素は、したほうがよいのでしょうか
一律の答えはありません。点滴は何を目的にするのか、酸素はどの症状や原因に対して使うのかを確認し、予想される利点と負担を本人の状態に沿って話し合います。
始めるか、続けるか、量を変えるかという医療方針は、本人の希望と医学的な評価をもとに決めます。家族だけで点滴を止めたり、処方された酸素の流量を変えたりしません。
呼吸音が変わったら、すぐ救急車を呼びますか
本人ごとの急変時指示に従います。在宅看取りの体制がある人は、訪問診療の医師や訪問看護師へ先に連絡する計画になっていることがあります。施設では職員が医療職へつなぐ手順があります。
指示がない、連絡先が分からない、予期していない急変で命に関わると感じる場合は、救急要請を含めて対応します。迷う場面を減らすため、状態が落ち着いているうちに連絡順を確認します。
確認した一次情報
厚生労働省「人生会議してみませんか」掲載『人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン』平成30年3月改訂、https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_02783.html(2026年8月20日確認)
日本緩和医療学会『進行性疾患患者の呼吸困難の緩和に関する診療ガイドライン(2023年版)』2023年、https://www.jspm.ne.jp/publication/guidelines/individual.html?entry_id=1390(2026年8月20日確認)
日本緩和医療学会『終末期がん患者の輸液療法に関するガイドライン(2013年版)』2013年、https://www.jspm.ne.jp/publication/guidelines/individual.html?entry_id=90(2026年8月20日確認)
久留米市『私の生き方ノート』(令和8年3月改訂)公式案内ページ、https://www.city.kurume.fukuoka.jp/1070kenkou/2040hokeneisei/3085zaitakuiryou/2020-0407-1545-209.html(2026年8月20日確認)
厚生労働省『令和8年度診療報酬改定説明資料等について』、https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_71068.html(2026年8月21日確認)
厚生労働省『訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法』、https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=84aa9734&dataType=0(2026年8月21日確認)
これらの資料には、がん患者や進行性疾患を主な対象とするものが含まれます。別の病気や老衰を含む全ての人が同じ経過をたどるという意味ではありません。
家族にできる備えは、変化を当てることより、普段との差を伝えること。手元に置きたいのは、急変時指示と連絡先を一枚にしたメモです。医療やケアの選択は、本人の希望を中心に、状態が変わるたび話し直せます。
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