この記事の目次
最初に探すのは隙間です。ベッドで過ごす親の肩がいつも前に丸まり、膝も伸びにくくなってきた。そんなときは、無理に体をまっすぐにせず、今の体と寝具の間を見るところから始めます。
一点で押さないことが基本です。ポジショニングは、本人が力を抜きやすい姿勢をつくり、同じ場所に負担が集まり続けるのを避けるための支援です。隙間を埋め、広い面で支えます。
拘縮がある関節を勢いよく伸ばしたり、痛みを越えて動かしたりはしません。姿勢を変える前に声をかけ、表情、呼吸、力の入り方を見ながらゆっくり動かします。痛みが出る手前で止めることが原則です。
家庭では観察までです。この記事で扱うのは、専門職へ相談するときの見方です。病気やけがを踏まえた姿勢、関節を動かしてよい範囲、リハビリテーションの方法は、医師、看護師、理学療法士、作業療法士などが判断します。
仰向けは頭から足首まで隙間をたどる
仰向けでは、最初からクッションを何個も入れません。枕や掛け物をいったん整え、頭、首、肩、背中、腕、腰、膝、ふくらはぎ、足首の順に、寝具から浮いて力が入っている場所を見ます。
頭と首
枕は後頭部だけを持ち上げる道具ではありません。後頭部から首にかけての隙間を受け、顔が左右どちらかへ向き続けたり、あごが胸へ押し込まれたりしない高さを探します。
首の形や呼吸の状態で合う高さは変わります。枕を替えたあとに呼吸がしにくそう、飲み込みにくそう、首に痛みが出たら元へ戻す。看護師やリハビリテーション職へ伝える変化です。
肩、背中、腰
背中の隙間をたどります。肩甲骨から腰、お尻までがマットレスに触れているかを見る。一部だけが浮く場合は、薄いクッションや折ったタオルを沿わせ、狭い一点で押さえません。
腰の下を厚く持ち上げると、本人が反り返って力を入れることがあります。入れたあとに肩がすくむ、腰が反る、足が突っ張るなら、支えが厚すぎる可能性があります。本人の表情を見ながら薄く戻します。
腕と手
腕全体をつなげます。肩から先だけがぶら下がらないよう、上腕、肘、前腕、手までを受ける。肘だけ、手首だけを高くせず、面に触れる置き方を選びます。
指を無理に開きません。爪が皮膚へ当たっていないか、手のひらが蒸れていないかを見る。開いてよい範囲や手の中へ入れる物は、看護師や作業療法士への相談対象です。
膝、ふくらはぎ、足首
膝裏の空間を見ます。膝が伸びきらない人の膝だけを押し下げると、痛みや抵抗につながる。膝の下からふくらはぎへ薄い支えを沿わせ、今の曲がり方を受け止めます。
脚全体の向きが要点です。ふくらはぎから足首も、狭い部分だけへ重さが集まらないようにつなげて支えます。足先が倒れ続ける場合は足首だけを固定せず、膝や股関節も専門職に見てもらいます。
たとえば、自分では寝返りが難しく、膝を伸ばそうとすると顔をしかめる人を考えます。家族が行うのは、膝を押して伸ばすことではありません。膝裏からふくらはぎの隙間を薄い支えで受ける。入れる前より顔の力が抜けたか、足の突っ張りが増えていないかを見ます。痛みが出ない姿勢と支えの位置を記録して専門職へ伝え、病状を踏まえた姿勢は専門職の判断です。
赤みは見直しの合図です。マットレス、寝る姿勢、体位を変える方法を考えます。専用クッションがない場面では、看護師などが姿勢と皮膚を見て、タオル等を一時的な姿勢保持に使うことがあります。
一時対応を長く続けません。ご家族と相談して専用クッションを用意し、仙骨部など骨が出た部分へ圧が集中しないよう、支える場所と厚みを職員間でそろえます。
仙骨部の赤みで支え方を見直す
ここでは、皮膚の変化に気づいた後の動きを分かりやすくするために条件を置いて考えます。自分では寝返りが難しい人の着替え中、家族が仙骨部の赤みに気づいたとします。家族は急いで厚く畳んだタオルを腰の下へ入れましたが、骨盤が傾き、本人は落ち着かない表情になりました。赤みは合図です。家族だけで位置を決め続けず、タオルを使った時刻、赤みの場所、姿勢を変えたときの表情を記録し、看護師とケアマネジャーへ相談します。看護師が皮膚と全身の姿勢を見たうえで支える場所を組み直し、長く使う可能性があるため専用クッションやマットレスの見直しも福祉用具専門相談員と検討しました。結果は「赤みが治った」と決めつけません。家族と支援者が同じ支え方を再現でき、皮膚の変化を続けて見られる状態まで整えた、という想定です。
横向きは背中と手足を別々に支える
腕や脚だけを引きません。本人に向きを伝えてから体を少しずつ動かす。介助者一人で安全に行えない場合は、訪問看護や介護事業所への相談が必要です。
頭、首、肩
肩幅の分だけ隙間が広がります。枕で後頭部から首までを受け、首だけが横へ曲がらない高さにする。下側の肩を無理に引かず、肩や腕が体の下へ巻き込まれていないかを見ます。
背中と腰
背中は長く支えます。肩甲骨の下から骨盤の後ろまで沿うクッションを置く。一部分だけを押さず、上半身と骨盤を広く受けます。
クッションを入れたあと、本人が前へ倒れそうなら背中側の支えが足りない可能性があります。反対に前へ押し出されるなら厚すぎます。背中の隙間と表情に合わせた調整が必要です。
腕、膝、足首
腕を置き去りにしません。上側は上腕から手までをクッションに預ける。下側も、肩の下へ入り込んだり、肘だけに重さがかかったりしない位置へ整えます。
脚全体を面で支えます。上側の太もも、膝、すね、足首までを一つのクッションで受ける。膝同士や足首同士が当たる場合は、その間も埋めます。膝だけを高くすると、股関節や腰がねじれやすいためです。
たとえば、横向きになると上側の膝が前へ落ち、腰がねじれて「戻して」と訴える人を考えます。太ももから足首までを受ける支えを入れ、背中側にもクッションを沿わせる。腰のねじれが減ったか、本人の表情が和らいだかを見ます。楽にならなければ元の姿勢へ戻し、どこへ入れたときに痛がったかを記録する。その情報を次の訪問時に専門職へ渡すケースです。
座位はお尻、背中、腕、足を順につなぐ
座位はお尻から見ます。ベッド上で整っていても、いすや車いすでは体が片側へ傾くことがあります。座面に接するお尻を出発点にして、骨盤、背中、頭、腕、足へ支えをつなげます。
お尻と骨盤
浅い座りを先に直します。お尻が座面の奥まで入り、骨盤が左右へ寄っていないかを見る。背中へクッションを足す前の確認です。介助が必要なら、本人を腕で引き上げず、職員から安全な方法を教わります。
柔らかさだけでは選べません。沈み込み方、姿勢を変えられるか、移乗できるかで選び方が変わります。家庭用クッションを何枚も重ねる前に、福祉用具専門相談員への相談対象です。
背中と頭
骨盤が整ったら、腰から肩甲骨までが背もたれに触れているかを見ます。体が片側へ傾く人に小さなクッションを強く挟むと、反対側へ押し返すことがあります。背中の隙間を広く受ける形と厚みを探します。
頭だけを固定しません。支えに届かない、首が同じ側へ倒れる場合は、背もたれや座面も含めて調整する。看護師、理学療法士、作業療法士、福祉用具専門相談員に座位全体を見てもらいます。
腕、手、足
肩の高さが手掛かりです。腕は肘掛けやテーブルを使い、肘から手までを広く受ける。肩がすくむなら高く、腕がぶら下がるなら低い可能性があります。痛みや麻痺がある側は、専門職が示した位置を優先します。
足裏も支えの一部です。床や足台に触れ、太ももだけへ重さが偏らないようにする。足を置けない、足首が強く傾く、足が後ろへ引ける場合は、座面の奥行きや高さも対象です。
たとえば、食事の間に体が右へ傾き、右腕が肘掛けから落ちやすい人を考えます。右側だけを強く押し戻す方法は避ける。お尻が奥へ入っているか、背中に隙間がないか、右の前腕を面で受けられるかの順に見ます。支えを変えた後も傾きや痛みが続くなら食事を中断し、元の姿勢へ戻す。その記録を専門職へ渡し、食事を続けてよい姿勢や座位時間を判断してもらいます。
体位変換は時計だけで決めない
間隔は一律ではありません。日本褥瘡学会「褥瘡の予防について」は、長時間同じ場所が圧迫されるのを避け、クッションなどで広い接触面積を保つ方法を示しています。体位変換の間隔には、体圧分散寝具の種類や骨の突出の程度による個人差があるとの説明です。
時計だけでは決めません。自分で少し動けるか、同じ場所へ重さが集まっていないか、皮膚に赤みや蒸れがないか、寝衣やシーツにしわがないかを見る。本人に合う予定を看護師やケアマネジャーと決めます。
姿勢の名前も残します。仰向け、横向き、座位のどれだったか、痛みや皮膚の変化があったか。時刻と一緒なら、訪問時に相談しやすくなります。毎回同じ形を再現できなくても、そのまま伝えて構いません。
クッションだけで解決しません。傷や強い赤み、触れたときの痛み、急な関節の動かしにくさは、医師や看護師へ相談します。関節の動かし方やリハビリテーションも、本人の病気と状態を見られる専門職の判断が必要です。
床ずれ防止用具と体位変換器を相談する
貸与種目でも自動ではありません。厚生労働省「福祉用具・住宅改修」は、床ずれ防止用具と体位変換器を対象種目に挙げています。本人の要介護度や状態だけで給付が決まるわけではありません。
| 用具 | 介護保険上の対象範囲 | 相談時に伝えたいこと |
|---|---|---|
| 床ずれ防止用具 | 福祉用具貸与の対象。要支援1・2と要介護1は原則として給付対象外だが、身体の状態などにより例外となる場合がある | 自分で寝返りできるか、皮膚の状態、現在のマットレス、介助できる人数 |
| 体位変換器 | 福祉用具貸与の対象。要支援1・2と要介護1は原則として給付対象外だが、身体の状態などにより例外となる場合がある | どの姿勢で困るか、痛み、家族が行っている介助、夜間の状況 |
厚生労働省の案内では、身体の状態などによって、要介護認定の基本調査結果に基づく判断や市町村への申請により給付対象となる場合があります。利用を考えたら、先にケアマネジャーへ相談します。介護保険給付の最終判断は久留米市が行います。
製品は個別に選びます。本人の希望、心身の状況、住環境を確認する必要があります。
相談の流れがあります。レンタルを考えるときは、久留米で介護用品をレンタルする際の相談の流れで確認できる記事です。
用具全体の整理も必要です。介護の福祉用具の選び方は、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員へ話す前に使えます。
素材や仕組みが違います。体圧分散マットレスは福祉用具で借りる方が多く、皮膚や体の状態に応じて見直します。ウレタン、エア、ゲルなどから、ケアマネジャー、看護師、福祉用具専門相談員と選びます。
自動で体位を変える機能に怖さを感じる方もいます。その場合は機器を無理に使わず、職員による体位変換を含めて方法を再検討します。間隔は全員一律ではなく、皮膚状態や寝具、本人の苦痛に応じた個別の判断です。
自動で動くマットレスを怖がる
ここでは、福祉用具が本人に合わなかった場合を分かりやすくするために条件を置いて考えます。寝返りが難しくなった人に、自動で体位を変える機能のあるエアマットレスを導入したとします。ところが、動き始めるたびに本人が柵を握り、「ベッドが動く」と訴えて眠れません。家族は必要な用具だから慣れてもらおうとしましたが、夜になると不安が強まりました。怖さも観察します。動いた時刻、本人の言葉、表情、眠れた時間帯を記録し、ケアマネジャー、看護師、福祉用具専門相談員へ共有しました。専門職と設定や使い方を確かめても不安が続いたため、別の体圧分散マットレスと介助による体位変換を含めて再検討したとします。機能の多さだけで選ばず、本人が受け入れられる方法と介助者が続けられる方法をそろえ直した、という想定です。
家族が続ける範囲を決める
全部を一度に直しません。頭から足まで完璧に合わせようとすると、家族の負担が大きくなるからです。痛がる場所、いつも浮く場所、重さが集まる場所から一つ選び、次の訪問で相談できるようにします。
普段の寝具で見てもらいます。訪問看護や訪問リハビリテーションを利用している場合は、本人のベッドとクッションを使う。家族が再現しやすいよう、向きや入れる順番を紙に残してもらう方法もあります。
依頼できる範囲は変わります。ケアプランや契約内容、本人の状態によって違うためです。
役割を分けておきます。久留米で訪問介護を利用する前に確認したい支援の範囲も参考にしながら、ケアマネジャーと話します。
よくある質問
クッションは多いほど体が安定しますか
個数よりも、どの隙間をどの面で受けるかが基準です。入れすぎると体を押し返し、かえって力が入ることがあります。一つ入れるたびに表情、呼吸、肩や脚の力を見て、合わなければ外します。
握り込んだ手へタオルを入れてもよいですか
指を無理に開いて入れることは避けます。爪や汗で皮膚が傷ついていないかを見る。手を開いてよい範囲と使う物は、看護師や作業療法士への相談が必要です。
床ずれ防止用具は要介護1でも借りられますか
要介護1では原則として介護保険給付の対象外ですが、身体の状態などにより例外となる場合があります。給付の可否を家庭だけで決めず、ケアマネジャーへ相談してください。最終判断は久留米市が行います。
確認した一次情報
- 厚生労働省「福祉用具・住宅改修」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000212398.html(2026年8月20日確認)
- 日本褥瘡学会「褥瘡の予防について」https://www.jspu.org/general/prevention/(2026年8月20日確認)
明日、仰向けの膝裏に隙間があるかだけを見てください。やることは一つです。
介護施設・老人ホームについてご相談ください
親御さんの暮らしや施設選びについて、現在の状況とご希望を伺いながら選択肢を整理します。



