この記事の目次
  1. 皮膚の下で何が起きているか
  2. 介護職が気づきたい皮膚の変化
    1. 消えにくい赤みを見つけたとき
  3. 姿勢によって観察する部位は変わる
  4. 観察しやすい場面を日課に組み込む
    1. 入浴・清拭・更衣
    2. 排泄介助
    3. 移乗・体位変換・長時間の座位後
  5. 圧迫・ずれ・湿潤を減らすケア
  6. 看護職へ伝わる報告の組み立て
  7. 介護職が独断で行わないこと
  8. よくある質問
    1. 赤みがあれば、すべて褥瘡ですか
    2. 赤い場所をマッサージしてもよいですか
    3. 体位変換の間隔は全員同じですか
    4. エアマットレスを使えば褥瘡は防げますか
  9. まとめ

入浴介助のとき、仙骨のあたりに赤みを見つけた。指で軽く押しても白くならない。前日は気づかなかった。褥瘡の始まりは、たいていこういう形で見つかります。

介護職がまず捉えたいのは、骨の出ている部位に現れる、休んでも消えにくい赤みです。あわせて周囲との温度差、硬さ、腫れ、痛み、水疱、紫色を帯びた変化も見ておきます。

見つけたときは、こすらない。深さを決めない。個別のケア計画と施設手順に沿って圧迫を避け、発見時刻と皮膚の状態を看護職へ報告します。皮膚が破れる前から始まっていることがあり、表面の変化が小さくても、内側で組織が傷んでいる場合があるからです。

皮膚の下で何が起きているか

褥瘡は、体重で圧迫された場所の血流が悪くなり、皮膚が赤くなったり、ただれや傷が生じたりする状態です。一般には床ずれとも呼ばれます。

日本褥瘡学会は、皮膚表面だけでなく、骨に近い深部の組織が傷ついている場合もあると説明しています。日本褥瘡学会「褥瘡について」を読むと、見た目の傷の大きさだけで判断できない理由が分かります。

発生に関わるのは圧迫だけではありません。身体が寝具の上で滑るときのずれ、移乗や衣類による摩擦、失禁や汗による湿潤、栄養状態、本人が自力で動けるかどうか。原因を一つに絞らず、姿勢、寝具、移乗、排泄、食事の状況をまとめて見ていきます。

介護職が気づきたい皮膚の変化

皮膚観察では、色だけで結論を出しません。左右差、周囲の皮膚との違い、本人の訴え、時間の経過を組み合わせて記録します。

観察する変化記録したい事実次の行動
赤みが続く部位、広がり、発見時刻、圧迫を避けた後の変化圧迫を避け、看護職へ報告する
紫色・暗赤色の変化色、範囲、周囲との差、いつから見られたか深部の損傷を介護職だけで判定せず報告する
周囲より熱い・冷たい左右差、周囲との温度差、触れた時の反応発熱や全身状態も確認し、看護職へ伝える
硬い・腫れている硬さや腫れの場所、広がり、痛みの有無強く押したり揉んだりせず報告する
水疱、皮むけ、出血、滲出液大きさ、量、色、におい、衣類や寝具の汚れ創面に独自の処置をせず、施設手順に従う
本人が痛い・しびれると言う本人の言葉、姿勢との関係、動作時と安静時の違い訴えを評価語に置き換えず、そのまま共有する

日本褥瘡学会のDESIGN-R 2020コンセンサス・ドキュメントは、急性期の所見として発赤、紫斑、浮腫、水疱、びらん、浅い潰瘍などを挙げています。皮膚の硬さ、皮膚温、疼痛もあわせて観察する考え方です。

ただしこの資料は医療職向けの評価ツールです。所見を集めるときの観点としては使えますが、評価区分を介護職が確定するためのものではありません。

消えにくい赤みを見つけたとき

日本褥瘡学会の一般向け解説には、赤い部位を指で軽く約3秒圧迫し、白く変化するかを見る「指押し法」が紹介されています。ただし現場では、本人の皮膚状態、痛み、事業所の手順、看護職の指示が優先です。検査のように繰り返し押したり、その結果だけで褥瘡と断定したりはしません。

圧迫を避けても赤みが残る場合は、発見時の姿勢、どのくらい同じ姿勢だったか、除圧後にどう変わったかを伝えます。赤い場所を揉むのは避けてください。ずれや摩擦が加わります。

姿勢によって観察する部位は変わる

骨が突出し、寝具や車いす、装具などに接する部位は圧迫を受けやすくなります。全身を毎回同じ順番で眺めるだけでなく、その方が長く取っていた姿勢から重点部位を考えます。

姿勢・状況特に見たい部位一緒に確認すること
仰向けが長い後頭部、肩甲骨周辺、肘、仙骨部、かかと枕や寝具への沈み方、かかとの接触
横向きが長い耳、肩、肋骨周辺、大転子、膝の内外、くるぶし膝や足首同士の接触、クッションの位置
座位・車いすが長い坐骨部、仙骨部、尾骨周辺、肩甲骨、かかと座面でのずれ、前滑り、フットサポートの位置
医療・介護機器を使用マスク、チューブ、固定具、装具が触れる場所締め付け、ねじれ、配線の挟み込み

皮膚の色が分かりにくい場合も、温度差、硬さ、腫れ、痛みは手がかりになります。必要な観察方法は看護職と共有し、利用者ごとのケア計画へ反映します。

観察しやすい場面を日課に組み込む

皮膚を見るためだけに生活を何度も中断していては、本人も職員も続きません。入浴、更衣、排泄介助、清拭、移乗、体位変換。皮膚が見える場面はもともと一日に何度もあります。そこを活かします。

入浴・清拭・更衣

広い範囲を見やすい時間です。前回との色の違い、下着や寝衣の汚れ、テープや装具が当たった跡を確認します。観察のために皮膚を強くこすらないでください。洗浄や保湿はケア計画と施設手順に沿って行います。

排泄介助

尿や便、汗による湿潤は、皮膚を傷つきやすくします。汚染の有無だけでなく、皮膚のふやけ、ただれ、便や尿が触れていた範囲、交換間隔も共有します。褥瘡と失禁関連皮膚炎の区別は介護職では付けられません。観察した事実を看護職へ渡します。

移乗・体位変換・長時間の座位後

ベッドの背上げ後に身体が足元へ滑っていないか、車いす上で前滑りしていないか、移乗時に皮膚を引きずっていないか。長く座ったあとは、坐骨部や仙骨部だけでなく、足台や靴、装具が触れる場所も確認します。

圧迫・ずれ・湿潤を減らすケア

体位変換の間隔は一律ではありません。日本褥瘡学会「褥瘡の予防について」も、体圧分散寝具の種類や骨の突出などによって個人差があると説明しています。

全員を共通の時間間隔に固定するのは避けてください。本人の自力体位変換能力、皮膚状態、寝具、安楽、睡眠などを専門職が評価し、個別のケア計画で方法と間隔を定めます。

介護職は、決められた体位変換や除圧を実施したあと、予定した姿勢が保てているかを確かめます。クッションを入れたことで別の骨突出部が強く当たることもあります。エアマットレスを使っていても観察は省けません。設定変更や用具選定は、看護職、リハビリテーション職、福祉用具専門相談員などと相談します。

ずれを減らすには、背上げ時の身体の位置、移乗方法、寝衣やシーツのしわを見直します。洗浄、保湿、皮膚保護は、個別のスキンケア計画と看護職などの指示に沿って行ってください。皮膚保護材や被覆材を新たに使うかどうかも、施設の手順と医療職の判断に従います。

看護職へ伝わる報告の組み立て

「お尻が少し赤いです」だけでは、程度も緊急性も伝わりません。次の順で事実をそろえると、看護職が確認しやすくなります。

項目伝える内容の例
発見14時10分、排泄介助時に確認
部位仙骨部の中央よりやや右側
見た状態赤み、水疱なし、皮膚の破れなし
触れて分かること周囲より温かい、硬さは判断できない、触れると顔をしかめた
背景13時から車いす座位、途中の除圧実施は記録上1回
行ったことケア計画どおりベッドへ移乗し、患部への圧迫を避けた
その後20分後も赤みが残っている

写真記録は経過の比較に役立ちますが、本人の同意、施設の規程、撮影に使う端末、保存先を確認してからにしてください。私物のスマートフォンで安易に撮るのは避けます。

報告後は、看護職の確認内容と新しい指示、次に観察する時刻を記録します。口頭で伝えて終わりにせず、次の勤務者が同じ条件で経過を追える形に残してください。

介護職が独断で行わないこと

  • 赤みを褥瘡と断定し、深さやステージを決める
  • 紫色や水疱を「様子見でよい」と決める
  • 赤い部位を揉む、強く押す、こする
  • 指示のない軟膏、消毒薬、被覆材を使う
  • エアマットレスの設定や体位変換間隔を独自に変える
  • 痛みや皮膚変化を「高齢だから」と扱い、記録しない

介護職が早く気づくことと、医師・看護職が評価して方針を決めること。この2つが揃ってはじめて対応が早くなります。職域を守るのは、観察した事実を適切な判断へつなぐための分担です。

よくある質問

赤みがあれば、すべて褥瘡ですか

赤みだけでは断定できません。圧迫を避けたあとの変化、周囲との温度差、硬さ、痛み、発生した状況を記録し、看護職へ報告してください。

赤い場所をマッサージしてもよいですか

行いません。摩擦やずれが加わり、悪化させるおそれがあります。圧迫が続かない姿勢を取り、施設の手順に沿って報告します。

体位変換の間隔は全員同じですか

一律ではありません。本人の動く力、皮膚状態、体圧分散寝具、骨の突出、安楽や睡眠を踏まえ、ケア計画や看護職の指示に従います。

エアマットレスを使えば褥瘡は防げますか

用具だけでは防ぎきれません。姿勢、ずれ、湿潤、栄養、皮膚状態を継続して見ます。設定や機種が本人に合っているかは、関係職種と確認します。

まとめ

褥瘡の早期発見で拾いたいのは、皮膚が破れる前の変化です。消えにくい赤み、紫色、温度差、硬さ、腫れ、痛み、水疱。これらを部位、発見時刻、姿勢、除圧後の変化とともに記録します。

診断やステージ判定、独自の処置は行いません。日常のケアの中で皮膚を見て、個別計画に沿って除圧とスキンケアを行い、変化を看護職へ具体的に報告する。評価と治療を医療職へつなぐこの分担が、利用者の皮膚と生活を守ります。

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参考にした一次情報

確認日:2026年8月13日