この記事の目次
  1. 介助前 今日できる動きを確かめる
    1. 片手と片脚に力を入れられる
  2. 準備 動く前に車いすと足場を整える
  3. 起き上がり 腕で引かず、端に座るまでを分ける
  4. 立つ前 足と手と合図をそろえる
  5. 移る 立てる人は重心移動、立てない人は用具を使う
    1. 立位が不安定になった
  6. 着座 向きを変えた後ほど急がない
  7. 終了 座れた後の安全まで確かめる
  8. 用具は「持ち上げる力」の代わりとして選ぶ
  9. 一人で続けない境目
    1. 夕方だけ膝折れが起きる
  10. トイレ・車・床からの介助へ応用するとき
  11. 腰を痛めたら次の移乗を同じ方法で続けない
  12. 本文の根拠にした公的資料

ベッドから起きた家族を車いすへ移そうとして、脇の下へ腕を入れる。立ち上がった瞬間に相手の膝が曲がり、とっさに腰で受け止める。毎日の短い介助に、腰を痛める動きが潜んでいます。

移乗の負担は、腕力の強さだけでは決まりません。本人にできる動き、ベッドと車いすの位置、介助者の足場、使う用具を先にそろえるほど、抱え上げる場面を減らせます。

追うのは一回の移乗です。ベッドから車いすへ移る動きを、準備から終了までたどります。体の状態は人ごとに違うため、固定した角度や一律の手順を正解にはしません。

介助前 今日できる動きを確かめる

最初に見るのは本人です。介助者の立ち位置は、その後に決めます。呼びかけに応じられるか。ベッドの端で座れるか。足を床へ置けるか。手すりを握れるか。今日の動きを分ける材料です。

前回立てたことは、今日の保証になりません。発熱、痛み、眠気、ふらつきがあれば、立位での移乗はいったん中止です。状態と介助方法を医療・介護職へ確認します。片側の力が突然入りにくい、顔がゆがむ、ろれつが回らないなどの症状があれば、脳卒中を疑って119番通報します。

質問は一つずつです。「右手で手すりを持てますか」「合図の後に足で床を押せますか」と尋ねます。できる動きを本人に担ってもらう。それが、自立支援と介助者の負担軽減の両方につながります。

厚生労働省の腰痛予防対策指針は、介助の程度、残存機能、意思疎通、協力度などを確認し、本人の協力を得る考え方を示しています。全介助を最初から前提にしない理由です。

片手と片脚に力を入れられる

右手で手すりを握り、右足で床を押せる人を仮定します。使える力があります。介助者が両脇を抱えると、その右側の動きまで止めてしまいます。

右手で握る場所、右足を置く場所、動き始める合図を専門職と決めておけば、介助者は動きを奪わずに不足分を支えられます。実際の方法は本人の評価に基づいて調整します。

アースサポートでは、最初から抱え上げません。立つ力が残っている方には、前へ重心を移す動きや、足裏で床を押す動きを待ちます。職員が補うのは、不足する力です。

手すりが助けになる方もいます。ケアマネジャーや福祉用具専門相談員と相談し、L字型の手すりを導入した例もあります。一人では不安が強い方には、手すりを握るまでと立ち上がる瞬間を職員が支える形です。

準備 動く前に車いすと足場を整える

本人を起こしてから車いすを探すと、座位を支える時間が延びます。準備も介助の一部です。車いす、履物、必要な用具を手の届く所へ置き、床のコード、敷物、床の濡れを先に確認します。

置き場所には二つの条件があります。本人が移る距離を短くできること。介助者の足も動かせることです。ベッドに対する向きは、本人の動ける側、部屋の広さ、使う用具で変わります。

動く前にブレーキです。足台は、本人の足の動きや介助者の足元を妨げない状態にします。肘掛けを外す方法は、車いすの構造と移乗方法を確かめてから選んでください。

製品ごとに操作が違います。ブレーキの方式、外せる部品、操作順も同じではありません。初めて使う用具は、福祉用具専門相談員やリハビリテーション職から実物で説明を受けることです。

一律の高さはありません。本人の足が安定して床へつくか。介助者が深く前かがみにならないか。ベッドの高さを変えられるなら、この両方を満たす範囲を探します。

近づける空間も必要です。厚生労働省の指針は、介助者が対象者へ近づくこと、作業に合わせてベッドの高さを調節すること、十分な介助空間を確保することを挙げています。

起き上がり 腕で引かず、端に座るまでを分ける

一気に立たせません。寝た姿勢から引き起こすと、介助者は前かがみで人の重さを受けます。起き上がる。ベッドの端へ座る。座位が安定する。段階を分けるのが基本です。

普段の方法を生かします。横向きになれる人なら、脚をベッドの外へ移す。腕や手すりを使って上体を起こす。その流れを待ちます。

介助者は肩や腕だけを引っ張りません。本人の体へ近づき、体幹や骨盤をどこで支えるかについて、本人を評価した専門職から教わった位置を使います。

端に座ったら、すぐ次へ進まないこと。足が床につくか、上体を保てるか、顔色や返事に変化がないかを見ます。座位が崩れるなら、立つ移乗は選びません。

遠くへ手を伸ばす姿勢も危険です。腰へ負担がかかります。必要な側へ回り込める空間を作り、腰をひねったまま本人を手前へ引かないことです。

立つ前 足と手と合図をそろえる

床に触れただけでは足りません。足底が安定し、立ち上がる方向へ体重を移せる位置が必要です。普段関わる専門職と確かめておきます。

介助者にも足場が要ります。足幅を取り、片足を動く方向へ置ける余地を残します。腰だけを回さず、足を踏み替えて自分の体ごと向きを変える準備です。

使える手を止めません。本人が手すりやベッド面を押せる場合は、その力を使います。介助者の首へ両腕を回してもらう方法では、介助者が引き寄せられ、二人の姿勢が崩れやすくなります。

声かけは短くします。「足を置きます」「体を前へ」「合図で立ちます」と段階を分け、本人の返事を待ちます。急に引き起こさず、呼吸と動き始めを合わせます。

新人職員が最初に見るのは環境です。動線上の物や濡れを確かめ、本人を急がせない声をかけます。倒れそう、転びそうという不安だけで、足を踏み出せなくなる方もいるからです。

介助中は目を離しません。すぐに支えられる位置を保ちます。合図は短く明確に。ただし、本人の尊厳を傷つける言葉は使いません。目標を達成できたときは、一緒に喜びます。

移る 立てる人は重心移動、立てない人は用具を使う

ここで方法が分かれます。足へ力を入れ、上体を保ち、合図に合わせられる人は、本人の立ち上がりと方向転換を介助者が補います。

まず本人の動きを待ちます。前へ重心を移し、手と足を使って立つ。介助者は本人の近くで不足する動きを支えます。腕だけで上へ持ち上げる介助ではありません。

立った後は、本人と介助者が足を小さく踏み替えます。介助者の足を床へ固定したまま腰だけをひねると、相手の重さが腰へ集まりやすくなります。

人力を止める境目です。立位を保てない。膝折れを繰り返す。上体が大きく崩れる。その場合は、スライディングボードや移動用リフトなどを検討する場面です。

厚生労働省の指針は、残存機能を使い、スライディングボードやシートで垂直方向の力を水平方向へ変える考え方を示しています。抱え上げを減らすための選択です。

スライディングボードを使う場合、肘掛けを外すか跳ね上げられる車いすなど、組み合わせる用具にも条件があります。板だけを買って自己流で始めません。家族は専門職から実物で手順を習います。

立位が不安定になった

以前は合図で立てた人が、体調変化の後から足へ力を入れにくくなったと仮定します。家族はいつもの合図を出した。けれども、本人の足は床を押せません。以前と同じように抱えれば、途中で二人とも支えを失うおそれがあります。

その日は立つ移乗を中止します。無理は続けません。ベッド上で安全を確保し、ケアマネジャー、福祉用具専門相談員、理学療法士や作業療法士などへ変化を伝えます。ボード、リフト、二人介助を含め、次の移乗方法を再評価するケースです。

着座 向きを変えた後ほど急がない

車いすへ向きを変えたら、本人の脚の後ろに座面が近づいているかを確認します。本人からは見えにくい場面です。声かけを止めると、不安が強くなりやすい方もいます。

持ち替えられるかが分かれ目です。肘掛けを握れる人でも、片手を離す場面があります。手が離せない人、指示に合わせにくい人には、別の支え方や用具が必要です。

介助者は膝を使って重心を下げ、本人の体が座面へ向かう動きを支えます。腰を曲げたまま速度を腕で止めると負担が集中します。

深く座らせようとして、着座と同時に本人を後ろへ引かないようにします。まず安全に座ります。姿勢を整える操作は、その後です。

座りが浅いときも、脇を抱えて持ち上げ直しません。本人が足で床を押せるか、左右へ体重を移せるかを確かめ、難しければシートや複数介助を検討します。

終了 座れた後の安全まで確かめる

移乗は、車いすへ触れた時点では終わりません。骨盤が片側へ傾いていないか、前へ滑っていないか、痛みや息切れがないかを本人へ尋ねます。

座った後にも確認が残ります。足台へ足を載せ、衣類の巻き込みや皮膚の圧迫がないかを見ます。ブレーキを解除して動く前には、手や肘が車輪へ近づいていないかも確かめてください。

介助者の体も点検します。腰の痛み、張り、足のしびれ、息切れがないか。違和感を覚えた動作は、その日のうちに手順と環境を振り返る必要があります。

「何とか移せた」で終えません。同じ無理が次の移乗でも続くからです。本人が担えた動き、支えが足りなかった場面、用具が邪魔になった位置を短く記録します。

アースサポートでは、本人の残存機能と当日の状態を見ます。一人で安全に行える介助は一人で行う考えです。人力での抱え上げが必要になる場合は一人介助を優先せず、福祉用具や複数介助を含めて方法を見直します。

難しさが増したら、方法を変える時期です。ケアマネジャー、福祉用具専門相談員、訪問看護などと用具や介助方法を見直します。車いすで入居した方が、リハビリを重ねて歩行器や手すりを使えるようになった例もあります。ただし、同じ経過を約束するものではありません。

出発点は本人の希望です。「自分で歩きたい」という思いを確かめ、ご家族と専門職も含めて、続けられる方法を探します。

用具は「持ち上げる力」の代わりとして選ぶ

用具には、本人が使える手足を生かし、二人が不安定な姿勢になる時間を短くする役割があります。介助者の負担軽減も、その役割の一つです。

用具検討しやすい場面腰の負担を減らす考え方選ぶ前の確認
スライディングボード座位を保てるが、立って方向転換するのが難しい持ち上げず、座面の間を滑る動きへ変える車いすの肘掛け、座面の高さ、皮膚の状態、本人の理解
スライディングシートベッド上の位置調整や、移乗前に体を近づけたい摩擦を減らし、引き上げる力を小さくする抜き方、滑りすぎ、皮膚への影響、対象となる動作
介助ベルト本人が立つ力を一部使え、安定した持ち手が必要腕や衣類をつかまず、近い位置で支える装着位置、締め方、禁忌、本人の痛みや皮膚状態
電動ベッド起き上がりや端座位、介助者の作業高を整えたい高さと背上げを調整し、深い前かがみを減らす足が床につく高さ、ベッド周囲の空間、操作方法
移動用リフト立位保持が難しく、人力介助の負担が大きい人の力で抱え上げる場面を機器へ置き換える吊り具の適合、設置空間、操作訓練、二人での確認要否

用具は人に合わせます。本人の体格、皮膚、関節の動き、理解、住環境で適否が変わるからです。試用できる場合は、実際のベッドと車いすの組み合わせで専門職と確かめます。

介護保険での扱いも一律ではありません。用具本体と付属品、本人の認定や状態、製品、手続きで異なります。「これは必ず借りられる」「これは必ず購入する」とは決められない制度です。

制度全体の整理も必要です。「介護の福祉用具の選び方」で確認できます。

久留米での相談には流れがあります。「久留米で介護用品をレンタルするには」で紹介しています。

用具より動作が先です。給付の可否や契約前の手続きは、ケアマネジャー、福祉用具専門相談員、久留米市の担当窓口へ個別に確かめます。購入や貸与を先に決めない選び方です。

一人で続けない境目

体重だけでは決まりません。座位が崩れる。足が急に抜ける。合図が通りにくい。狭くて介助者が足を動かせない。どれも一人介助を見直す目安です。

一人で何とかする前提を外します。用具を置く空間がない。介助者と本人の体格差が大きい。介助者に腰痛がある。こうした条件も判断材料です。

厚生労働省の指針は、福祉用具を積極的に検討し、どうしても人力が必要な場合は複数人で対応する考え方を示しています。複数人でも抱え上げのリスクは残ります。

二人介助では、開始前に役割と合図を決めます。二人が別々の速さで動くと、本人の体がねじれ、片方の介助者へ負担が偏ります。

夕方だけ膝折れが起きる

朝は自分で立てるものの、夕方は疲れて膝が曲がりやすい人を仮定します。朝の方法を一日中使うと、体調の変化を見落とします。

夕方は準備を変えます。最初から二人介助や用具を用意し、その日の様子で方法を選びます。人員や用具を用意できないときは、移乗の時刻やサービス体制までケアマネジャーと見直す場面です。

頼める範囲には違いがあります。訪問介護では、本人のケアプランや事業所との契約で変わるためです。「久留米で訪問介護を利用する前に」も相談前の整理に使えます。

トイレ・車・床からの介助へ応用するとき

トイレでは、移乗に加えて衣類の上げ下げが入ります。狭い場所で腰をひねりやすいため、便座へ移る動作と衣類を扱う動作を分け、手すりと足場を先に整えます。

車ごとに条件が変わります。座面の高さ、ドアの開き方、屋外の傾斜が違うからです。頭をかがめたまま抱えて押し込まず、乗降方法を専門職と実車で確かめます。

床からの介助は負担が大きい。介助者が深くかがみ、人の重さを垂直に持ち上げやすいからです。転倒後なら、痛みやけがの有無を確かめ、無理に立たせません。

普段の評価が前提です。本人が自力で四つ這いや椅子へのつかまり立ちをできるか。難しければ一人で抱えず、家族、事業所、救急相談など状況に合う支援を求めてください。

腰を痛めたら次の移乗を同じ方法で続けない

鋭い痛みが出た。動いた後もしびれや痛みが続く。立つことが難しい。こうしたときは、そのまま次の移乗を担わず、医療機関へ相談してください。

介護が回らない。その不安が、痛みを我慢する理由になります。ケアマネジャーへ、どの動作で痛めたか、何回必要か、代われる人がいるかを伝えてください。

組み合わせで支えます。短期的には家族内の交代、訪問介護、通所や短期入所、二人介助、福祉用具などがあります。利用できる支援は認定、ケアプラン、事業所の体制で変わります。

体の使い方だけでは続きません。本人の状態、用具、部屋、人数、サービスを一緒に変える。抱え上げる必要そのものを減らす考え方です。

本文の根拠にした公的資料

根拠は公的資料です。介助前の評価、残存機能の活用、抱え上げの回避、ベッドの高さ、用具、複数介助は、厚生労働省『職場における腰痛予防対策指針及び解説』を根拠にしています(2026年8月20日確認)。

<https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/001376468.pdf>

通知本文と解説もあります。厚生労働省『職場における腰痛予防対策の推進について』で確認できます。確認日は2026年8月20日です。

<https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb9484&dataType=1>

制度上の区分も確認しました。福祉用具の区分と相談員の役割は、厚生労働省『福祉用具・住宅改修』によります(2026年8月20日確認)。個別製品の給付可否は別途確認が必要です。

<https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000212398.html>

用具の機能にも根拠があります。厚生労働省『介護保険の給付対象となる福祉用具及び住宅改修の取扱いについて』で確認しました(2026年8月20日確認)。

<https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta4381&dataType=1&pageNo=1>

評価軸は腕力ではありません。本人が使えた動き。介助者が無理なく足を動かせたか。次も同じ方法で安全に続けられるか。移乗後に見るのは、この三つです。

明日、最初の移乗前に、本人が使える手と足を一つずつ声に出して確かめてください。行動は一つです。

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