高齢の親が時々ぼんやりし、その間のことを覚えていないと、家族は認知症なのか、疲れているだけなのかと迷います。高齢者のてんかんでは、激しいけいれんが目立たず、一時的なぼんやりや記憶の抜けとして見える場合があります。ただし、家庭で症状からてんかんと診断することはできません。
受診へつなぐために役立つのは、始まりと終わり、呼びかけへの反応、体の動き、終わった後の様子を時刻とともに残すことです。一方、緊急性があるときは記録や撮影より、安全確保と119番通報を優先します。
まず安全を確保し、緊急時は119番へ
国立病院機構静岡てんかん・神経医療センターは、全身の激しいけいれんが5分以上続く場合、救急車を呼ぶよう案内しています。また、同センターの救急受診に関する案内は、意識が回復する前に次の発作が起こる、強く頭を打ったといった状況も緊急対応が必要な例として挙げています。
けいれんしている人を強く押さえつけたり、口へ物を入れたりしないでください。周囲の硬い物や熱い物を遠ざけ、可能な範囲で頭を守ります。嘔吐があった場合の姿勢や手当は、119番の指令員の指示に従います。
これらは緊急例の一部であり、「5分未満なら必ず大丈夫」という意味ではありません。初めての意識障害、普段と明らかに違う症状、呼吸の異常、けがなどがあるときは、別の病気の可能性も含め、119番や医療機関への相談を優先してください。
「ぼんやり」を家庭で診断しない
国立長寿医療研究センターの一般向け資料は、高齢者てんかんではけいれん以外の症状が中心になる人がいること、発作前後にぼんやりして出来事を忘れ、認知症と間違われる場合があることを説明しています。
ぼんやりする原因は、てんかんに限りません。脳卒中、感染症、低血糖、薬の影響、脱水など、急いで対応が必要な状態もあります。「何度か同じことがあったから今回も待つ」と決めず、初回や普段と違う変化は早めに医療機関へ相談します。
始まり・反応・終わりを時刻で残す
静岡てんかん・神経医療センターは、発作の頻度、タイプ、時間、起こりやすい時間帯、睡眠時間などを一覧にした記録が診療に役立つと案内しています。診断名を付けるのではなく、見た事実を短く書きます。
- 始まる直前に何をしていたか
- 気づいた時刻と、普段の状態へ戻った時刻
- 名前を呼ぶ、簡単な問いをするなどへの反応
- 顔や目の向き、手足や口の動き、左右の違い
- 転倒、頭部打撲、失禁、嘔吐の有無
- 終わった後の眠気、混乱、頭痛、本人の記憶
- 前夜の睡眠、発熱、食事、飲酒、薬の飲み忘れや変更
「三分ほど右手が一定に動いた」「呼びかけに目を向けたが返事はなかった」のように書くと、医療者へ伝わりやすくなります。家族が時計を見られなかった場合は、正確な秒数を作らず「数分程度」など分かる範囲にします。
動画は安全を確保できた場合だけ
同じような症状を繰り返す場合、動画が診療の参考になることがあります。ただし、撮影のために119番通報を遅らせたり、倒れそうな本人から離れたりしてはいけません。まず危険な物を遠ざけ、必要な救急要請を行います。別の家族がいて、安全を確保できる範囲でのみ撮影を考えます。
撮影した動画は医療情報を含みます。本人が話し合える状態なら目的と保存方法を説明し、SNSや家族グループへ安易に共有しないようにします。受診先へどう見せるか、保存後いつ削除するかも決めておきましょう。
受診時は普段の状態も伝える
お薬手帳、症状の一覧、可能な場合の動画を持参します。本人が普段できている会話、着替え、食事、外出なども伝えると、「いつもとの違い」を医療者が把握しやすくなります。新しく始めた薬、市販薬、飲酒、睡眠不足、発熱なども隠さず共有します。
本人が「覚えていないから何も起きていない」と考えることもあります。否定したり、認知症やてんかんと決めつけたりせず、「昨日の夕方、呼んでも返事がない時間があったので相談したい」と、観察した事実から話します。
記録の目的は、家庭で病名を当てることではありません。繰り返しを医療者へ具体的に伝え、必要な検査や支援へつなぐことです。そして、緊急性がある場面では、メモを完成させるより先に119番へ連絡してください。
参考・確認先
以下は2026年9月7日に本文を確認しました。
- 国立長寿医療研究センター「高齢者てんかん専門外来を開設しました」(2021年4月の外来開設を説明する一般向け資料。久留米の現行窓口ではありません)
- 国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター「発作の記録」
- 同センター「発作時の対応」
- 同センター「救急受診が必要な場合」
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