在宅介護中に親が吐いたときは、床の汚れより先に本人の反応、呼吸、顔色を確認します。嘔吐は感染性胃腸炎だけで起こるものではありません。意識がはっきりしない、呼吸が苦しそう、血を吐いた、突然の激しい腹痛や頭痛、顔や手足の突然の異変がある場合は、片付けを後回しにして119番へ連絡し、指令員の案内に従ってください。
本人が落ち着いていても、高齢者は嘔吐によって脱水し、体力を消耗することがあります。飲んだ量、吐いた回数、尿、発熱、下痢、腹痛などを記録し、かかりつけ医へ相談します。そのうえで、片付ける人が感染を広げないよう準備します。
最初の数分で見ること
まず本人に声をかけ、普段どおり答えられるか、呼吸が楽にできているかを見ます。口の中に吐いた物が残り、むせているときは、無理に飲ませず、119番の指令員や医療者の指示を受けてください。反応がない、普段どおりの呼吸ではない場合は119番です。
厚生労働省は、高齢者について「血を吐く」「突然の激しい腹痛」などを迷わず119番を呼ぶ症状として示しています。ろれつが回らない、顔の片側が動きにくい、片方の手足に力が入らないなどが急に現れた場合も同様です。嘔吐があるから胃腸炎だろうと決めず、全身の変化を確認します。
緊急性が高い症状が見当たらない場合は、次をメモします。
- 吐いた時刻と回数、量や色、血が混じっていないか
- 発熱、下痢、腹痛、頭痛、めまい、むせの有無
- 水分が取れるか、尿が出ているか
- 直前に食べた物、同居家族に似た症状がないか
- 持病、服薬、当日の飲み忘れや重複がないか
このメモは原因を家庭で診断するためではなく、医師に経過を伝えるためのものです。ノロウイルスかどうかは症状だけでは特定できないと、厚生労働省のQ&Aにも明記されています。
片付ける人と本人の動線を分ける
本人を安全な場所で休ませ、ほかの家族やペットが汚れた場所を通らないようにします。片付ける人は、使い捨てのエプロンまたはガウン、マスク、手袋を着けます。途中で電話やドアノブに触れる必要がないよう、ペーパータオル、袋、使用する薬剤、水拭き用の布を先に近くへ用意します。
厚生労働省は、床に飛び散った吐物をペーパータオルなどで静かに拭き取るよう案内しています。勢いよくこすったり、乾くまで放置したりせず、外側から中心へ寄せるように覆って取ります。使用したペーパータオルなどは袋に入れ、口を閉じます。
床の消毒は薬剤の用途を取り違えない
吐物を取り除いた後は、床材に使える薬剤かを確認して消毒し、その後に水拭きします。厚生労働省のノロウイルスQ&Aでは、次亜塩素酸ナトリウムを使う場合、吐物を拭き取った後の床は塩素濃度約200ppm、廃棄物を袋内で浸す場合は約1,000ppmと、用途によって記載が異なります。
そのため、家庭用漂白剤の量を一つの作り方で覚えて、床・衣類・袋に同じように使うのは避けます。製品ごとに原液の濃度、使用できる素材、薄め方が違うため、商品ラベルの「使用上の注意」と用途を確認してください。
塩素系漂白剤は、酸性タイプの製品と一緒に使ったり混ぜたりすると有害な塩素ガスが発生するため、絶対に混ぜません。十分に換気し、目や皮膚に付着しないよう手袋などを着け、製品表示に従って扱います。目に入った場合はすぐに水で洗い、表示された応急処置を行って医師に相談してください。次亜塩素酸ナトリウムには漂白作用と金属腐食性があるため、処理後は薬剤を十分に拭き取ります。
この手順は感染を広げないための備えです。嘔吐の原因は症状だけで決めず、必要に応じて医師に相談してください。薬剤を使えない床材や家具では、自己流で強い薬剤を使わず、製品メーカーや専門業者に確認します。
衣類・寝具に付いたとき
汚れた衣類やシーツは、その場で大きく振らず、周囲に飛び散らないよう分けます。厚生労働省は、汚物を除いた後、洗剤を入れた水の中で静かにもみ洗いし、しぶきを吸い込まないよう注意することを示しています。また、下洗いしたリネン類について、85℃で1分以上の熱水洗濯が適するとしています。
家庭の洗濯機や素材がその温度に対応しない場合もあります。塩素系薬剤を使うと色落ちや生地の傷みが起こり得るため、素材と製品表示を確認します。すぐ洗えない布団については、十分に乾燥させ、スチームアイロンや布団乾燥機を使う方法がQ&Aで案内されていますが、製品の耐熱性を先に確認してください。
最後は手袋を外して手洗いまで
汚れた面に触れないようエプロンと手袋を外し、袋を密閉します。手袋を着けていても、処理後には石けんと流水で手を洗います。厚生労働省は、手洗いを手指に付いたノロウイルスを減らす最も有効な方法とし、消毒用エタノールは石けんと流水による手洗いの代用にはならないと説明しています。
片付けた後も、本人が水分を取れているか、意識や呼吸、腹痛などに変化がないかを見ます。高齢者で脱水が強い場合は輸液などが必要になることがあるため、吐き続ける、水分が取れない、尿が少ない、ぐったりするなどがあれば、早めにかかりつけ医や医療機関へ相談してください。血を吐く、意識や呼吸がおかしいなどの緊急症状では119番です。
家庭に置くなら「処理セット」にする
使い捨て手袋、マスク、エプロン、ペーパータオル、袋を一つの箱にまとめ、家族が場所を知っておくと、慌てたときに探さずに済みます。薬剤は誤飲を防ぐため、元の容器で表示が読める状態にし、食品や飲料と離して保管します。
大切なのは、完璧に掃除することより、本人の急変を見逃さず、片付ける家族まで体調を崩さないことです。体調確認、静かな拭き取り、用途に合う消毒、水拭き、手洗いの順で進めましょう。
参考・確認先
以下は2026年9月5日に本文を確認しました。
- 厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」(Q&A最終改定表示:2021年11月19日、統計数値の一部更新:2026年6月30日)
- 厚生労働省「こんな時は迷わず119へ」
- 消費者庁「雑貨工業品品質表示規程(三 衣料用、台所用又は住宅用の漂白剤)」(2026年9月5日確認)
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