この記事の目次
引越し後に家具の傷や家電の故障に気づいたら、状態を写真に残し、できるだけ早く契約した引越事業者へ申し出ます。片付けが終わるまで連絡を待つと、引越し前後の状態を確かめにくくなります。
標準引越運送約款では、荷物の一部の紛失や損傷について、引渡日から3か月以内に通知を発しないと、事業者の責任が消滅する規定があります。ただし、この3か月を家の壁や床の傷、荷物の全部の紛失、遅延へ一律には当てはめられません。
「写真を撮ったから補償される」「3か月あるから後でよい」と考えず、記録と連絡を同時に進めます。
傷を見つけた日は、全体と傷の両方を残す
傷の接写だけでは、どの家具のどの部分か分からないことがあります。写真は、品物全体、傷がある位置、傷の近くを撮り分けます。位置も分かる記録に。残すのは、元の画像と撮影日時です。
国民生活センターの「引越トラブルにご注意」報告書は、引越し前後を写真や動画で記録し、問題に気づいたら早く申し出るよう勧めています。原因が引越し前からのものか、引越しで生じたものかを後から特定しづらいことが、その理由です。
作業前の写真がなくても、いまの記録から始める
すでに引越しが終わっていて、作業前の写真がない場合も、いまの状態から記録を始めます。購入時や以前の部屋の写真に品物が写っていれば、それも資料候補になります。前の写真がないことだけで、家族が補償の可否を決める必要はありません。
次を一緒にまとめておくと、説明がばらばらになりにくくなります。
- 品名、傷や不具合の場所、気づいた日時
- 引越し前の状態が分かる写真や動画
- 引越し後に撮った写真や動画
- 見積書、契約書、適用される約款、支払いの記録
- 当日の作業について伝えた要望と、事業者から受けた説明
破損した物を処分したり修理したりする前は、事業者が状態を確認する方法と、修理等の進め方を連絡で確かめます。生活に必要な物が使えず急ぐ場合は、急ぐ理由も伝え、写真や修理見積りをどう残せばよいか聞く進め方です。
事業者には、発見と要望を分けて伝える
最初の連絡で、原因や賠償額をすべて断定する必要はありません。
契約者名、引越日、対象の品物、発見した状態を伝え、調査と対応を求めます。
家族が連絡をまとめるなら、次のような内容を一通にしておくと使えます。
○月○日の引越しで運んだ○○について、○月○日に○○部分の損傷を確認しました。写真を添付します。状態の確認方法と、補償を含む今後の対応をご案内ください。契約者は○○、見積書番号は○○です。
これは連絡文の書き方の提案です。実際に分かっている内容を入れ、確認していない作業や会話を付け足さないようにします。
電話で伝えた場合も、連絡日、担当者名、説明の内容、返答予定日をメモしておく方法があります。事業者がメール等の窓口を設けているなら、写真と申出内容を送って記録を残します。
作業をした人、見積りをした人、補償を担当する人が同じとは限りません。現場へ伝えた後は、契約先の正式な窓口にも届いているか確認すると、対応を待つ間の連絡先がはっきりします。
「3か月」が書かれた条文の対象を確かめる
国土交通省の標準引越運送約款第25条は、荷物の一部の滅失または損傷について、引渡日から3か月以内に通知を発しない限り責任が消滅する、と定めています。
ここで読む点は、対象が「荷物の一部の滅失又は損傷」であることと、起点が「荷物を引き渡した日」であることです。傷を発見した日から3か月、と置き換えると期限を誤ります。
| 起きたこと | 確認する先 |
|---|---|
| 運んだ家具の傷、荷物の一部の紛失 | 適用約款の申出期限。標準約款第25条なら引渡日から3か月以内の通知 |
| 家屋の壁・床・ドアの傷 | 建物の損害への対応と適用条項を契約先へ確認 |
| 荷物が全部届かない、予定日に届かない | 全部の紛失・遅延について適用される条項を確認 |
標準約款には、事業者が損害を知って荷物を引き渡した場合、第25条第1項を適用しないという規定もあります。ただし、「当日の担当者は気づいていたはず」と推測するだけで期限を気にしなくてよい、と判断しないほうがよいでしょう。経緯を記録して相談します。
実際の契約は、事業者が設定する約款に基づきます。国民生活センターも、約款や見積書を確認するよう案内しています。標準約款の説明を読んだ後は、自分の契約先でどの約款が適用されているかを確かめます。
期限は、申し出を先延ばしにするためのものではありません。気づいた時点で連絡し、返答を待つ間も資料を残します。
補償額の話は、修理と契約の資料をそろえてから
標準約款第26条は、荷物の滅失や損傷によって直接生じた損害を賠償する規定です。傷ついたから新品の購入代金がそのまま支払われる、とは読み取れません。
修理できるか、何が壊れたか、事業者がどの状態を確認したかによって、話し合う内容が変わります。家族が先に買替代金だけを請求するより、現物の確認、修理の見積り、対応方針の順で確かめる方法があります。
家屋の傷なら、借家か持ち家かも含めて連絡先を整理します。賃貸で管理会社や貸主への連絡が必要になった場合は、引越事業者とのやり取りと一緒に記録します。誰か一人の記憶に頼ると、後で説明が食い違うためです。
事業者の説明に納得できない、返答が来ない、どの条項を示されているか分からない場合は、約款、見積書、写真、連絡記録を持って消費生活センターへ相談します。写真があるだけで賠償が決まるわけではありませんが、相談に使える材料です。
引越し前なら、見積書に載せる情報を増やせる
これから親の住み替えを手伝うなら、荷物量だけでなく、家具の大きさと搬出・搬入経路を伝えます。国民生活センターは、オンラインや電話での見積りでは、利用者が必要な情報を正しく伝える必要があり、不安があれば訪問見積りも検討するよう案内しています。
エアコンの脱着などの附帯サービスは、作業内容、追加料金、担当する事業者を先に確認します。荷物を運ぶ契約と、それに伴う工事の話が混ざると、不具合の連絡先も分からなくなります。
家族が別日に荷造りをする場合は、写真を撮る担当と、当日に立ち会う担当を決めておく方法があります。貴重品や大事な物を自身で包装・運搬することも、国民生活センターの助言に含まれます。
住み替え自体を検討している段階なら、高齢の親が賃貸から住み替えるタイミングで、住まいの選び方から確認できます。転居先を決めた後は、見積りと損傷記録の担当を家族で引き継ぎます。
久留米市消費生活センターは、市の利用案内に掲載された0942-30-7700で相談を受けています。全国共通の「188」も相談窓口を案内します。
傷を見つけたら、今日の状態を撮り、今日連絡した記録を残す。片付けの終了を待たずに始められる作業です。
根拠資料
- 国民生活センター「引越トラブルにご注意」、2026年2月4日公表(2026年10月9日確認):報告書本文
- 国土交通省「標準引越運送約款」、令和7年国交省告示第193号改正(2026年10月9日確認):第25条・第26条等
- 久留米市「消費生活センターの事業案内」(2026年10月9日確認):利用案内
介護施設・老人ホームについてご相談ください
親御さんの暮らしや施設選びについて、現在の状況とご希望を伺いながら選択肢を整理します。



