この記事の目次
  1. 12兆2,208億円に含まれる費用
  2. 物価と賃金を支える報酬になっているか
  3. 176件の倒産を、地域の介護の継続から考える
  4. 利用者負担を抑え、提供に必要な費用を確保してほしい
    1. 参照資料

利用者の負担は、できる限り抑えたい。それでも、物価や賃金の上昇に対応しながら介護の質を保つには、これまで以上の費用が必要になると考えています。事業所を続けられることと、利用者が介護を受け続けられることは、つながっています。

厚生労働省が公表した2025年度の介護給付費等実態統計では、年間の費用額は約12兆2,208億円。前年度より約2,827億円、2.4%増えました。費用額の原表

12兆2,208億円に含まれる費用

今回の約12兆2,208億円は、保険給付額、公費負担額、利用者負担額を合わせた費用です。利用者が窓口で払う額だけを足した数字ではありません。市区町村が直接支払う償還払いも含みません。

2025年度の介護費用を構成する保険給付・公費負担・利用者負担の関係

この統計の2025年度は、2025年5月〜2026年4月の審査分です。全国の費用総額が増えたことは分かりますが、そこから支出を差し引いた個々の事業所の収支までは分かりません。

介護にかかる費用を社会としてどう支えるかと、利用者が窓口でどれだけ負担するか。その二つを考えるために、まず数字の範囲を押さえておきたいと思います。

物価と賃金を支える報酬になっているか

介護報酬の改定率と、全国の介護費用の増減率は、対象も年度も違う数字です。

年度指標値
2024年度介護報酬・全体改定率+1.59%
2025年度統計の全国費用額・前年比+2.4%
2026年度介護報酬・全体改定率+2.03%(うち処遇改善+1.95%)

改定率の出典は厚労省の報告資料、費用の増加率は2025年度の原表です。2026年度改定は、今回の2025年度統計より後の動きです。

全体の改定率が、そのまま各事業所の増収率になるわけでもありません。サービスの種類や算定する加算などにより影響は異なります。

改定率に加えて、実際に必要な費用を支えられる水準かを確かめたいと思います。報酬が増えても、それ以上に支出が増えれば、経営の余裕は小さくなります。

2026年度の全体改定率2.03%のうち、1.95%は職員の処遇改善に関する改定です。処遇を改善することは必要です。そのうえで、事業所には日々のサービスを動かす費用もかかります。賃金を確保できても運営を維持できなければ、働く場所そのものが続きません。職員の処遇と事業所の継続を、一緒に支えられる報酬を望みます。

物価や賃金が変わったとき、必要な人員を確保できるか。物品や設備を維持し、安全に支援できるか。報酬の水準は、そうした具体的な仕事に照らして考えるべきだと思います。

176件の倒産を、地域の介護の継続から考える

東京商工リサーチによると、2025暦年の「老人福祉・介護事業」の倒産は176件でした。負債1,000万円以上を対象とした集計で、2年連続で過去最多となっています。倒産には複数の要因があり、介護報酬だけが原因とは言えません。事業を続ける難しさを考えるうえで、私は重く受け止めています。東京商工リサーチの原資料

私が心配しているのは、倒産がこのまま増え、必要な介護を受けられる場所が地域から減ってしまうことです。利用者の状態や暮らしに合う支援を近くで確保できなくなれば、利用者と家族の選択肢は狭まります。事業所の経営が、利用者の暮らしにも影響する。そうした悪循環を防ぐために、介護を担う事業所が続けられる条件を整える必要があると考えています。

利用者負担を抑え、提供に必要な費用を確保してほしい

介護が必要になった人にとって、利用料は暮らしの中で支払うお金です。事業所の経営が厳しいからといって、利用者や家族に負担を求めることを簡単に考えたくはありません。費用の心配から必要な支援を控える人が増える状況は避けたいと思います。

インフレが続く状況では、サービスの質と提供体制を守るために、介護にかかる費用が増えることは避けられない面があると思います。

もちろん、事業者として日々の業務や支出を見直すことも必要です。その取り組みと併せて、制度の側でも、物価や賃金の変化に対応できる報酬を確保してほしいと思います。

利用者の直接負担を極力抑えながら、介護に必要な費用を確保してほしい。サービスの質を維持するための費用増には、その立場で向き合いたいと考えています。

参照資料

情報確認日:2026年10月17日。

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