失語症のある家族と話すときは、短い言葉に加え、写真や実物、文字など、本人が使いやすい手段で意思を確かめます。言葉が出るまで待つ時間も、会話の一部です。
声を大きくするか、文字にするか。使う方法は、本人の状態に合わせて選びます。失語症では、聞く・話す・読む・書くという言葉の働きへの影響が、人によって異なるからです。
ここで扱うのは、失語症と診断された人が、担当医や言語聴覚士と相談しながら続ける日常のやり取りです。
うなずきだけで伝わったことにしない
名古屋市総合リハビリテーション事業団の「ご存知ですか?失語症」は、うなずいたり、言葉を繰り返せたりしても、十分に理解していない場合があると説明しています。
「はい」と返ってきたから、細かな予定まで共有できたとは限りません。日時、時間、金額などの数字も聞き間違う場合があるため、予定を決める場面では、短い言葉と見せる情報を組み合わせて確かめます。
この確認は、本人の判断を家族が取り上げるためのものではありません。本人が何を受け取り、何を伝えようとしているかを、使える手段でやり取りするための工夫です。
失語症のある人を、話せる量だけで判断しないことも欠かせません。同事業団は、その人らしい性格や日常的な挨拶、状況を判断する力など、病前とあまり変わらない面も紹介しています。ただし、他の障害が重なる場合もあり、全ての能力が同じように保たれると決めつけず、本人の状態を担当者と確認します。
文章より、実物や一つの単語が使いやすい場合もある
会話の道具は、増やせばよいわけではありません。同事業団は、大きめの単語や数字、写真・絵・実物などを活用する一方、文章や50音表は難しい場合があると案内しています。
| 伝えたいこと | 選べる手段 |
|---|---|
| 具体的な物の希望 | 本人が見分けられる実物や写真を見せる |
| 日時や金額 | 短い言葉と、大きめの数字を合わせる |
| 場所や行き先 | 写真や地図を使って示す |
| 言葉にしにくい気持ち | 表情や身振りも見ながら、本人の反応を待つ |
表は会話を組み立てるための選択肢です。写真を見せても、選びにくい人はいます。漢字が読みやすい人もいれば、文字自体が難しい人もいます。本人が答えられないときに、同じ方法を繰り返して試験のようにしないことです。
使いやすかった道具や伝わりやすかった言葉は、家族の間でも共有しておくと、次の会話で使えます。反対に、伝わりにくかった方法も、言語聴覚士へ相談する材料になります。
静かな場所で、言い終わるまで待つ
話を始める前には、お互いの顔が見える位置へ。テレビなどの音が重ならず、会話に集中できる場所を選びます。言葉は短く、ゆっくり、はっきり伝えます。
本人が話そうとしている途中では、家族が先に答えを完成させてしまわないようにします。本人が言い終えるまで待つことは、黙って放っておくこととは違います。表情や指さしも受け取りながら、本人が伝える時間を残します。
会話がかみ合わないときは、同じ長い説明をもう一度読むより、話題を一つに絞り、写真や短い言葉に替えてみる余地があります。本人に合う組み合わせを探す際には、担当の言語聴覚士の助言を受けてください。
退院前に、家で使う方法を教わっておく
国立病院機構東京病院の言語聴覚療法の案内では、必要に応じたコミュニケーションノートの作成や、家族への会話方法の指導を紹介しています。
同じ支援を全ての医療機関で受けられるという意味ではありませんが、家族が相談したい内容を考える手掛かりになります。伝えたい予定や日常の選択、家でやり取りしにくい場面を挙げて、使う写真・文字・道具を一緒に確かめます。
介護施設・老人ホームについてご相談ください
親御さんの暮らしや施設選びについて、現在の状況とご希望を伺いながら選択肢を整理します。



